W杯2026グループFで日本代表と対戦するスウェーデン代表。予選グループでは2分4敗の最下位に沈みながら、ネーションズリーグの成績でプレーオフに滑り込み、そこから2連勝で2大会ぶりの本大会出場を勝ち取った。その中心にいたのが、プレーオフ2試合で4ゴールを叩き出したエースFWヴィクトル・ギェケレシュだ。
2025年10月に就任したグレアム・ポッター監督のもと、戦術的柔軟性を武器に生まれ変わったスウェーデン。本稿では最新の26人メンバー、フォーメーション、戦術的特徴、そして日本との対戦で鍵となるポイントを徹底分析する。
| 国名 | スウェーデン王国(Konungariket Sverige) |
|---|---|
| 監督 | グレアム・ポッター(イングランド人、2025年10月就任) |
| W杯出場 | 13回目(2大会ぶり) |
| W杯最高成績 | 準優勝(1958年・自国開催) |
| 基本フォーメーション | 3-4-2-1(可変式) |
| グループF | オランダ、日本、チュニジア、スウェーデン |
| 日本戦 | 6月25日(第3節) |
| チーム市場価値 | 約3億6,400万ユーロ |
| 平均年齢 | 26.4歳 |
予選の軌跡:最下位からの"下剋上"
スウェーデンのW杯への道は、決して平坦ではなかった。
| 大会 | 対戦 | 結果 | 得点者 |
|---|---|---|---|
| 欧州予選グループ | 6試合 | 0勝2分4敗(最下位) | — |
| PO準決勝 | vs ウクライナ(A) | 3-1 勝利 | ギェケレシュ(6分,51分,73分PK) |
| PO決勝 | vs ポーランド(H) | 3-2 勝利 | エランガ(20分),ラーゲルビエルケ(44分),ギェケレシュ(88分) |
予選グループではアゼルバイジャン、スロバキア、スペインなどと同組で0勝。通常なら敗退が確定するところだが、ネーションズリーグの成績がセーフティネットとなり、プレーオフへの出場権を確保した。
プレーオフに入ると別チームに変貌。3月26日のウクライナ戦では、ギェケレシュがハットトリックの大暴れ。6分に先制すると、51分に追加点、73分にはPKも確実に沈めて3-1の快勝でプレーオフ決勝に進出した。
「彼がなぜアーセナルでプレーし、ヨーロッパ屈指のストライカーなのかを証明した」——ウクライナ・レブロフ監督もギェケレシュに脱帽
3月31日のプレーオフ決勝・ポーランド戦はさらにドラマチックだった。2022年大会のプレーオフでポーランドに敗れた"リベンジマッチ"。20分にエランガが先制し、44分にはラーゲルビエルケのヘッドで2-0。しかしポーランドもザレフスキとシフィデルスキのゴールで追いつき、2-2の同点に。勝負は88分に決着した——ギェケレシュがストロベリー・アレーナを歓喜の渦に包む決勝弾を叩き込み、スウェーデンは2大会ぶり13回目のW杯出場を決めた。
予選グループ最下位(0勝2分4敗)という屈辱的な成績から、プレーオフではエースのギェケレシュが2試合4ゴールと完全に覚醒。ウクライナ戦のハットトリックとポーランド戦の88分決勝弾は、まさに"一人で切符を掴んだ"と言える圧巻のパフォーマンスだった。
グレアム・ポッター監督の戦術——柔軟な3-4-2-1
監督プロフィール
グレアム・ポッターは、スウェーデンのエステルスンドで指揮を執った経験を持つイングランド人指揮官だ。ブライトン、チェルシー、ウェストハムとプレミアリーグで監督を歴任し、2025年10月にスウェーデン代表監督に就任。当初はW杯予選プレーオフに向けた短期契約だったが、予選突破の功績が評価され、2026年3月に2030年までの長期契約に延長された。
基本布陣:3-4-2-1
ウクライナ戦で採用した3-4-2-1がポッター・スウェーデンの基本形だ。
守備時は5-4-1に変形し、ウイングバックが最終ラインに下がることでコンパクトな5バックブロックを形成。攻撃時はウイングバックが高い位置を取り、2シャドーがギェケレシュの周囲で流動的にポジションを変える。
ポーランド戦では状況に応じて4-4-2に可変するなど、試合中のシステム変更も厭わない。これはポッターがブライトン時代から得意としてきた「カメレオン戦術」の真骨頂だ。
戦術的特徴
| 項目 | 特徴 |
|---|---|
| 守備 | 5バックブロックでスペースを消し、リトリート守備を徹底 |
| ビルドアップ | GKからの丁寧な組み立てよりも、縦に速い展開を志向 |
| 攻撃 | ギェケレシュへのロングフィードとカウンターが生命線 |
| セットプレー | 長身選手が多く、CKやFKからの得点力が高い |
| プレス | 高い位置からのプレスと、ブロック守備を状況で使い分け |
| 可変性 | 3-4-2-1→4-4-2→5-4-1と試合中にシステムを柔軟に変更 |
ブライトン時代から一つのシステムに固執しないことで知られるポッター。スウェーデンでも3-4-2-1を基本としつつ、ポーランド戦では4-4-2に可変。守備時には5バックでスペースを消し、攻撃時にはギェケレシュを軸にした速い縦展開を見せる。対戦相手によってシステムを変えてくる可能性が高く、日本としてはスカウティングが難しい相手だ。
最新メンバー26名——プレーオフ招集リスト
| Pos | 選手名 | 所属クラブ | 年齢 | 市場価値 |
|---|---|---|---|---|
| GK(3名) | ||||
| GK | メルケル・エルボルグ | サンダーランド | 22 | €300万 |
| GK | ノエル・テルンクヴィスト | コモ | 24 | €200万 |
| GK | クリストッフェル・ノルドフェルト | AIK | 36 | €17.5万 |
| DF(7名) | ||||
| CB | イサク・ヒエン | アタランタ | 27 | €2,200万 |
| CB | ヴィクトル・リンデレフ | アストン・ヴィラ | 31 | €600万 |
| CB | グスタフ・ラーゲルビエルケ | ブラガ | 25 | €500万 |
| CB | カール・スタルフェルト | セルタ | 30 | €500万 |
| CB/SB | エリク・スミス | ザンクトパウリ | 29 | €500万 |
| LWB | ダニエル・スヴェンソン | ドルトムント | 24 | €2,200万 |
| LWB | ガブリエル・グドムンドソン | リーズ | 26 | €2,000万 |
| MF(8名) | ||||
| MF | ルーカス・ベルグヴァル | トッテナム | 20 | €4,000万 |
| MF | フーゴ・ラーション | フランクフルト | 21 | €3,200万 |
| MF | ヤシン・アヤリ | ブライトン | 22 | €3,000万 |
| MF | イェスペル・カールストローム | ウディネーゼ | 30 | €400万 |
| MF | マティアス・スヴァンベリ | ヴォルフスブルク | 27 | €900万 |
| MF | ベスフォルト・ゼネリ | ユニオンSG | 23 | €450万 |
| MF | ヘルマン・ヨハンソン | FCダラス | 28 | €180万 |
| MF | エリオット・ストロウド | ミャルビーAIF | 23 | €300万 |
| FW(8名) | ||||
| FW | ヴィクトル・ギェケレシュ | アーセナル | 27 | €6,500万 |
| FW | アントニー・エランガ | ニューカッスル | 23 | €4,000万 |
| FW | ルーニー・バルドギ | バルセロナ | 20 | €1,500万 |
| FW | ヴィリオット・スヴェドベリ | セルタ | 22 | €1,500万 |
| FW | ベンヤミン・ニーグレン | セルティック | 24 | €1,000万 |
| FW | グスタフ・ニルソン | クラブ・ブルッヘ | 28 | €200万 |
| FW | グスタフ・ルンドグレン | GAIS | 30 | €130万 |
| FW | タハ・アリ | マルメFF | 27 | €120万 |
本大会で合流か?——イサクとクルゼフスキの復帰問題
プレーオフの26名には含まれなかったが、W杯本大会に向けて注目すべき"不在の大物"が2人いる。
アレクサンデル・イサク(FW / リバプール / 26歳)——2025年9月にニューカッスルから英国移籍最高額の£1億2,500万でリバプールへ移籍したストライカー。12月のトッテナム戦で脛骨を骨折し長期離脱していたが、W杯本大会には復帰が見込まれている。ギェケレシュとイサクの2トップが実現すれば、大会屈指の破壊力を持つ攻撃陣が誕生する。
デヤン・クルゼフスキ(MF/FW / トッテナム / 25歳)——2025年5月に膝蓋骨を手術し、約10ヶ月の長期離脱中。3月のプレーオフではチームに合流して精神的サポートを行ったが、プレーはできなかった。本大会への出場は不透明だが、復帰できれば右ウイングに圧倒的なクオリティが加わる。
ギェケレシュ(アーセナル)とイサク(リバプール)の2トップが実現すれば、プレミアリーグのトップクラブで主力を務めるストライカー2枚を同時に起用することになる。この組み合わせは、大会参加48カ国の中でも最も強力な2トップの一つとなる可能性がある。日本にとっては、プレーオフ時以上に警戒が必要な相手になる。
注目選手5人——日本が警戒すべきキーマン
1. ヴィクトル・ギェケレシュ(FW / アーセナル / 27歳)
スウェーデンの絶対的エースにして、今大会のグループFで最も危険なストライカーの一人。2025年夏に€6,350万でスポルティングCPからアーセナルへ移籍し、プレミアリーグ1年目から11ゴールを記録。CLでも4ゴールを挙げている。
188cmの長身と強靭なフィジカルを持ちながら、スピードとテクニックも兼備するコンプリートストライカー。プレーオフ2試合で4ゴールという数字が示す通り、大舞台での勝負強さは折り紙付きだ。ハーランドと比較される決定力は、日本のCB陣にとって最大の脅威となる。
2. ルーカス・ベルグヴァル(MF / トッテナム / 20歳)
スウェーデンの未来を担う20歳のセントラルMF。トッテナムでプレミアリーグ1ゴール2アシストを記録し、市場価値€4,000万はチーム内でギェケレシュ、エランガと並ぶ最高額クラスだ。技術と戦術眼に優れ、ビルドアップの中心を担う。若さを感じさせない落ち着いたプレーが特徴。
3. イサク・ヒエン(CB / アタランタ / 27歳)
セリエA王者アタランタでレギュラーを務めるCB。188cmの高さに加え、対人守備の強さとカバーリング能力が持ち味。3バック中央でスウェーデンの守備の柱を担う。市場価値€2,200万はDF陣最高で、コパ・イタリアやCLの経験も豊富。
4. ダニエル・スヴェンソン(LWB / ドルトムント / 24歳)
ブンデスリーガのドルトムントで定位置を確保した左ウイングバック。今季1ゴール1アシストに加え、FotMob平均レーティング7.06はチーム内でも高水準。攻守両面でダイナミックな上下動を見せ、左サイドからのクロスとドリブルで攻撃の幅を広げる。市場価値€2,200万はヒエンと並ぶDF陣最高額。
5. アントニー・エランガ(FW / ニューカッスル / 23歳)
2025年夏に£5,500万でニューカッスルへ移籍。スピードとドリブルが武器のウインガーで、ポーランド戦では先制ゴールを記録した。CLで2ゴールを挙げるなど大舞台での実績もある。右サイドからのカットインも左ウイングからの突破も可能で、ポッター監督の可変システムにおいて複数のポジションをこなせるユーティリティ性も魅力。
ベルグヴァル(20歳)、バルドギ(20歳)、ラーション(21歳)の次世代トリオに加え、リンデレフ(31歳)やカールストローム(30歳)のベテランが要所を締める。プレミアリーグ、ブンデスリーガ、セリエA、ラ・リーガの4大リーグに所属選手を抱え、欧州トップレベルの経験値は侮れない。
スウェーデンの強みと弱点
強み
1. ギェケレシュという"個の力" プレーオフの結果が証明する通り、ギェケレシュ一人でチームを救える決定力を持つ。空中戦、フィジカルコンタクト、シュート精度のすべてがトップクラス。
2. 守備の堅さ 3バック(5バック変形)による組織的守備が機能。ヒエン、リンデレフ、スタルフェルトの3CBは長身揃いで空中戦に強く、セットプレー時のゾーン守備も徹底されている。
3. ポッターの戦術的引き出し 試合中にシステムを変えられる柔軟性は、短期決戦のW杯で大きなアドバンテージ。対戦相手に合わせた"ゲームプラン"を準備できるのは、クラブチームの経験が豊富なポッターならではの強みだ。
弱点
1. プレーオフ時の創造性不足(本大会では改善の可能性) プレーオフではギェケレシュの4ゴール以外は、エランガとラーゲルビエルケの1ゴールずつのみとゴールソースが偏った。ただし、本大会でイサクが復帰すれば攻撃の幅は大幅に広がる。クルゼフスキの復帰可否もチームの上積みを左右する大きな変数だ。
2. 予選グループの低調なパフォーマンス 0勝2分4敗という予選成績は事実として残る。プレーオフで覚醒したとはいえ、チームとしての安定感には疑問符が付く。
3. GKの不安定さ 正GKのポジションが確立されていない。ウクライナ戦ではエルボルグ(22歳)、ポーランド戦ではノルドフェルト(36歳)と異なるGKを起用しており、守護神の定まらなさはW杯本大会に向けた不安材料だ。
W杯グループF日程とスウェーデンの戦い方
| 節 | 日程 | 対戦 | 会場 |
|---|---|---|---|
| 第1節 | 6月14日 | スウェーデン vs チュニジア | モンテレイ・スタジアム(メキシコ) |
| 第2節 | 6月20日 | オランダ vs スウェーデン | NRGスタジアム(ヒューストン) |
| 第3節 | 6月25日 | 日本 vs スウェーデン | AT&Tスタジアム(アーリントン) |
初戦のチュニジア戦が最大のターニングポイント。ここで勝点3を確保できれば、第2節のオランダ戦で引き分け狙いの守備的布陣を敷く余裕が生まれる。第3節の日本戦は、グループステージの突破を懸けた直接対決になる可能性が高い。
日本代表が警戒すべき3つのポイント
1. ギェケレシュの封じ方。188cmの大型FWに対し、冨安健洋と板倉滉のCBコンビがどこまで対抗できるか。空中戦だけでなく、背負ってからの反転シュートにも要注意。
2. 5バックの崩し方。スウェーデンが守備的に構えた場合、日本のサイド攻撃(三笘・伊東)がウイングバックの背後を突けるかが鍵。中央が固いなら、サイドからのクロスとミドルシュートの使い分けが重要。
3. セットプレーの対応。長身選手が多いスウェーデンはCKやFKが大きな武器。日本はゾーン守備の中でマーキングの精度を高める必要がある。
スウェーデンのW杯過去の成績
| 大会 | 成績 | 備考 |
|---|---|---|
| 1958年(自国開催) | 準優勝 | 決勝でブラジルに2-5で敗戦 |
| 1994年アメリカ | 3位 | ブルガリアに勝利し銅メダル |
| 2006年ドイツ | ラウンド16 | ドイツに敗退 |
| 2018年ロシア | ベスト8 | イングランドに0-2で敗退 |
| 2022年カタール | 不出場 | プレーオフでポーランドに敗退 |
1958年の自国開催では準優勝、1994年のアメリカ大会では3位と、W杯での実績は決して小さくない。2018年ロシア大会ではベスト8に進出しており、北欧のサッカー大国としての底力を侮るべきではない。
予選最下位からの劇的なW杯出場は、エース・ギェケレシュの爆発力とポッター監督の戦術的手腕の賜物だ。3-4-2-1を基本にした柔軟な布陣、守備の堅さ、そして大舞台で結果を出す勝負強さが武器。一方で、ギェケレシュ依存の攻撃やGKの不安定さが弱点として残る。日本にとっては「ギェケレシュをいかに封じるか」がすべての鍵を握る対戦となるだろう。